人の伴侶を愛するということ

 人の伴侶を私は二度,愛した.いえ,一人は今も愛している.
 Kは学生時代,社会人時代を通じて,皆の人気者だった.人柄,ルックス,おまけに,家柄,すべてを持っていた.私がKを知ったとき,既に既婚者であった.当初私は,気の合う,話題の合う,友人として接していた.Kも本が好きだった.
 当時,皆が Excel を使い始めようとする時期だった.私はすぐに使い方を覚えたが,Kはなかなかうまく使いこなせなかったので,私が使い方を教える日が続いた.そうだ,Excel というより,マウスを使い始めようとする時期でもあったのだ.マウスをここに合わせるんですよ,とそれを伝えるのがもどかしくて,マウスの上で手を重ねて操作をした.それが二人だけの秘密となった.
 私はKに自分の気持ちを伝えた.ありがとう,とKは言った.
 Kが会社を辞めることになり,その送別会の日,私は残業をした.
 その後,年賀状のやり取りは今も続けている.