賭博者 (新潮文庫)

 「わたし」とマドモワゼル・ブランシュの会話より.賭博者 (新潮文庫)

 わたしは彼女の寝室に入った.彼女はばら色の繻子の布団をかけて寝ころんでおり,布団の下から小麦色の,健康そうな,みごとな肩がのぞいていた.−−夢でしか見られないようなその肩が純白のレースを縁どった麻の肌着でわずかにおおわれ,その肌着がまた彼女の小麦色の肌に驚くほどに合った.
 「坊や,あなたは勇気がある?」 わたしを見るなり,彼女は叫んで,笑い出した.彼女の笑い声はいつもたいそう快活で,時には誠実でさえあった.
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 彼女は,靴をはいている時だけ,実にかわいらしく見えるほとんどすべての女の足とは違って,形の損なわれていない,本当にみごとな小麦色の小さな足を突きだした.わたしは笑いだして,その足に絹のストッキングをはかせにかかった.マドモワゼル・ブランシュはその間ベッドに坐って,早口にしゃべりつづけていた.
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 この時わたしはもう一方の足にストッキングをはかせていたが,こらえきれなくなって,その足にキスした.彼女は足をふり放し,爪先でわたしの顔を打ちはじめた.

 そういう「趣味」について書いている小説ではない.でも,ロシア文学って「男女のこと」はほとんど書かないって言いますからね.ここまで書いてあるだけでもよしとしますか.